ペットボトルで埋め尽くされた部屋。その光景は、不衛生で、見た目にも悲惨ですが、多くの人は、それが直接的な「火災」の危険に繋がるとは、あまり考えないかもしれません。しかし、ペットボトルの山は、特定の条件下で、予期せぬ「発火源」となり得る、極めて危険な存在なのです。その最も警戒すべき現象が、「収れん火災」です。収れん火災とは、ペットボトルやガラス玉、あるいは水の入った金魚鉢などが、虫眼鏡のようにレンズの役割を果たし、太陽光を集めることで、近くにある可燃物を発火させる火災のことを指します。特に、中途半半端に水が残ったペットボトルは、その水の部分が凸レンズとなり、光を一点に集中させやすい性質を持っています。窓際に、この水の入ったペットボトルが、カーテンや、紙類、衣類などの燃えやすい物の近くに、長期間放置されている状況。これこそが、収れん火災が発生する、典型的な危険なシチュエーションです。太陽の位置は、時間と共に移動するため、偶然、その焦点が、燃えやすい物の上に、一定時間、結ばれてしまうと、そこから煙が上がり、やがては発火に至るのです。実際に、消防庁からも、この収れん火災への注意喚起がなされており、決して稀なケースではありません。また、直接的な発火源とならないまでも、ペットボトルの山は、火災の被害を甚大化させる、大きな要因となります。ポリエチレンテレフタレートという樹脂でできているペットボトルは、熱で溶けると、有毒なガスを発生させます。さらに、ひとたび火災が発生すれば、大量のペットボトルは、避難経路を塞ぎ、住人の逃げ遅れの原因となります。また、消防隊の消火活動においても、ペットボトルの山は、水が火元に届くのを妨げる障害物となり、消火を著しく困難にします。ペットボトルの山は、ただのゴミの山ではない。それは、いつ火を噴いてもおかしくない、静かなる発火装置であり、火災の被害を拡大させる、危険な燃料でもあるのです。
ペットボトルがゴミ屋敷で発火源になる?