天井までゴミが堆積した現場、いわゆる「完全埋没型」のゴミ屋敷清掃は、特殊清掃業界の中でも最も難易度が高く、高度な戦略的判断が求められる作業です。このような現場での清掃は、単にゴミを袋に詰める作業ではなく、一種の「解体工事」に近い性質を持ちます。まずプロが最初に行うのは、玄関ドアを開けた瞬間の「安全確認」です。ゴミの自重によってドアが歪んでいたり、開けた瞬間に上部からゴミが雪崩のように崩落してきたりする危険があるため、細心の注意を払って突破口を開きます。作業の基本原則は「トップダウン方式」です。足元からゴミを掻き出すと、上部のゴミが不安定になり、作業員が下敷きになるリスクがあるため、まずは天井付近のゴミから順に、層を剥がすように除去していきます。この際、作業員はゴミの山を登って作業することになりますが、ゴミの下に何があるか分からないため(割れたガラス、鋭利な金属、あるいは腐敗した生ゴミなど)、踏み抜き防止の安全靴や防護服、そして粉塵から呼吸器を守るための防毒マスクの着用が必須となります。また、天井までゴミがある現場では、酸素濃度が低下していたり、腐敗ガスが滞留していたりすることがあるため、強力な送風機による換気を並行して行います。搬出作業においても工夫が必要です。天井付近のゴミを直接玄関まで運ぶのは非効率なため、チームプレーでバケツリレーのようにゴミを受け渡し、あるいは窓からクレーンを使って一気に搬出するルートを構築します。特に、圧縮された下層のゴミは想像を絶する重さになっており、床材と癒着していることも多いため、剥離作業には専門の薬剤や機材を投入します。さらに、清掃と並行して行われるのが「貴重品の捜索」です。天井までゴミがあるからといって、すべてを廃棄物として扱うわけではありません。通帳、印鑑、現金、思い出の写真などは、ゴミの層のどこかに必ず埋もれています。プロのスタッフは、大量のゴミを機械的に処理するのではなく、一瞬の感触や視覚的な違和感から、これらの重要物を見つけ出す「選別の目」を持っています。最後に、ゴミをすべて搬出した後に残る、深刻な汚れと異臭の除去です。長年ゴミに押し付けられていた壁や天井には、カビや煤、ニコチンが染み付いており、これらを高濃度のオゾン脱臭機や特殊洗剤で完全に中和します。天井までゴミがある現場を再生させることは、物理的な空間だけでなく、依頼主の止まっていた時間をも動かすことなのです。
天井まで埋まった部屋を効率的に清掃するプロの技