汚部屋の大掃除を阻む最大の障壁は「捨てるか残すかの判断」にあります。モノの一つひとつに思い出や執着、あるいは「いつか使うかもしれない」という不安がまとわりつき、結局何も捨てられずに元の場所に戻してしまう。この停滞を打破するための極めて有効な手法が「仮置き収納」という考え方です。これは、判断に迷ったモノを即座に捨てるのではなく、一定期間「執行猶予」を与えるための専用スペースを作るというものです。例えば、大きめの段ボール箱を数個用意し、迷ったモノをどんどんそこへ入れていきます。その箱には日付を書き込み、半年から一年という期限を設定します。そして、その期間中に一度も箱を開けることがなければ、中身を確認せずにそのまま処分するというルールを自分に課すのです。この方法の素晴らしい点は、掃除の手を止めずに済むことです。汚部屋の掃除において、判断の迷いは最大の敵です。迷った瞬間に作業がストップし、過去の記憶に浸り始めてしまうと、その日の大掃除は失敗に終わります。仮置き収納は、その決断を未来の自分に委ねることで、現在の自分の作業スピードを維持させます。また、視界からモノが消えることで、そのモノがなくても生活に支障がないという事実を体感できるのも大きなメリットです。実際に箱に入れてしまえば、数週間もすれば何を入れたかさえ忘れてしまうことがほとんどです。その「忘れる」というプロセスこそが、執着を断ち切るために必要なステップなのです。汚部屋に住む人々は、モノとの距離感が近すぎます。仮置きという形で一度距離を置くことで、客観的な視点を取り戻すことができるようになります。もちろん、この仮置きスペースそのものが汚部屋の一部になってしまわないよう、置く場所と量をあらかじめ決めておくことが重要です。クローゼットの天袋や、普段目に入らない物置の一角など、生活のメイン動線から外れた場所を「聖域」として設定しましょう。
捨てられない人のための仮置き収納術の有効性