空のペットボトルで埋め尽くされた部屋。一見すると、腐敗した生ゴミなどがないため、他のゴミ屋敷に比べて、衛生的なリスクは低いように思えるかもしれません。しかし、ペットボトルゴミ屋敷には、特有の、そして極めて深刻な危険が潜んでいます。まず、最も警戒すべきが「火災のリスク」です。ペットボトルそのものは、燃えにくい素材ですが、その形状が、火災の危険性を増大させます。中に水が残ったペットボトルは、太陽光を集めてレンズのように作用し、近くのカーテンや紙類に焦点を結んで発火させる「収れん火災」の原因となる可能性があります。窓際にペットボトルの山が築かれている場合、このリスクは決して無視できません。また、大量のペットボトルは、ひとたび火災が発生した際に、極めて危険な障害物となります。避難経路を塞ぎ、逃げ遅れる原因となるだけでなく、溶けて有毒なガスを発生させたり、消防隊の消火活動を著しく妨げたりします。次に、「害虫の温床となる」という問題です。飲み残しのジュースやお茶が残ったペットボトルは、ゴキブリやコバエにとって、格好の餌場であり、繁殖場所となります。特に、糖分の多い飲料は、害虫を強力に誘引します。また、ペットボトルの隙間や内部は、湿気が溜まりやすく、カビの発生源ともなります。これらの害虫やカビは、アレルギーや喘息、感染症といった、深刻な健康被害を引き起こす原因となります。さらに、「物理的な危険」も伴います。高く積み上げられたペットボトルの山は、非常に不安定です。地震などの揺れで、一気に崩れ落ちてくる「ペットボトル雪崩」が発生し、下敷きになって怪我をしたり、身動きが取れなくなったりする危険性があります。また、床に転がったペットボトルに足を滑らせて、転倒するリスクも常に付きまといます。このように、ペットボトルゴミ屋敷は、その見た目以上に、住人の生命と健康を脅かす、多くの危険性をはらんだ、油断のならない空間なのです。
ペットボトルゴミ屋敷が招く深刻なリスク