実家が汚部屋状態のまま親が亡くなってしまった場合、その後の遺産分割協議は極めて困難かつ紛糾しやすいものとなります。法的な観点から見れば、実家の片付けは「負の遺産の清算」であり、これを相続発生前に行うことには多大なメリットがあります。まず、汚部屋状態の実家は、不動産としての評価額が著しく不安定になります。ゴミの中にどのような損傷が隠れているか不明なため、査定が大幅に買い叩かれるだけでなく、買い手が見つからずに塩漬け状態になるリスクがあります。相続が発生してから兄弟姉妹で清掃費用を誰が負担するかを話し合うのは、感情的な対立を招き、いわゆる「争族」の原因となります。特に、一人の相続人が清掃を主導した場合、その労力や費用の分担を巡って不公平感が生まれ、長年の家族関係が破綻することも珍しくありません。親が存命中に、親自身の資金(つまり将来の相続財産の一部)を使って業者に依頼し、実家を片付けておくことは、将来の遺産分割の土台をクリーンに整えることと同義です。また、汚部屋の中には通帳や証券、土地の権利書といった重要な財産が埋もれている可能性が高く、これらを事前に発見・整理しておくことは、正確な財産目録の作成に不可欠です。相続が始まってからゴミの中から権利書を探す作業は、砂浜で針を探すようなものであり、発見できなければ法的な手続きがさらに煩雑になります。生前整理として業者に依頼すれば、贈与税の枠内での資金提供として処理できる場合もあり、税務面でも有利に働くことがあります。さらに、清潔になった実家を拠点として、親の老後資金の計画や介護の役割分担を家族全員で冷静に話し合えるようになるという心理的なメリットも大きいです。汚部屋を放置することは、物理的なゴミだけでなく、複雑な法的手続きと親族間の確執という負の遺産を子世代に押し付けることに他なりません。実家を綺麗に保つことは、家族全員が納得できる円滑な資産承継のための、極めて合理的で戦略的な準備なのです。
実家の片付けを遺産分割の前に終わらせるべき法的メリット