ゴミ屋敷の中には、明らかにゴミと思われるものだけでなく、未開封の新しい商品が山積みになっているケースが多々あります。これはいわゆる買い物依存症がきっかけとなって生じる状況です。ある女性は、職場の人間関係でのストレスを解消するために、毎晩のようにネットショッピングを繰り返していました。宅配便で届く荷物を開ける瞬間の高揚感だけが、彼女が感じられる唯一の喜びとなってしまったのです。しかし、届いた商品そのものには執着がなく、箱を開けることさえせずに放置されるモノが次第に増えていきました。彼女にとって、買い物は必要だからするものではなく、心の中の得体の知れない空洞を埋めるための代償行為でした。モノが増えれば増えるほど、部屋は狭くなり、生活は不自由になりますが、比例して増していく不安を打ち消すために、さらに新しいモノを注文するという悪循環から抜け出せなくなりました。きっかけは、誰にでもあるような「自分へのご褒美」だったはずが、いつしか自分をコントロールできなくなり、部屋そのものを物理的に圧迫するに至ったのです。このタイプのゴミ屋敷の住人は、モノを捨てることが自分の存在価値を捨てることのように感じてしまい、強い抵抗を示します。積み上がった未開封の箱は、彼女が社会と繋がっているという、歪んだ形での証明でもありました。物理的な清掃を行っても、心の空洞が埋まらない限り、彼女は再び買い物という手段で部屋を埋め尽くしてしまうでしょう。根本的な解決には、買い物依存の背景にある孤独やストレスの正体を突き止め、専門的なカウンセリングを受けることが不可欠です。定期的に鮮度を確認し、淀みを溜めないことが、部屋のエネルギーを健全に保つ秘訣です。汚部屋に住んでいた過去を持つ自分を否定する必要はありません。その経験があったからこそ、今ある清潔な空間の価値が痛いほど分かるはずです。ゴミ屋敷は、彼女の心の悲鳴が物質化した姿であり、モノを減らすことは、彼女が自分自身と向き合うための第一歩に他なりません。
買い物依存症が心の空洞をモノで埋める時